優しい檻
コンクールの結果は見事予選通過となった。
「先生!やりました!予選通過しましたよ!」
船越に電話で報告すると、
「当然だろ。これからが勝負だ。たかが予選通過で浮かれるな。」
と、あっさりした返答だった。
「何それ、激励の言葉もなし?」
俊一が言った。
「…うん、でもいいの。
先生は私を信じてくれてたんだもの。」
「―そっか…」
「俊、今日来てくれてありがとう。本当に嬉しかった。」
俊一は雪依の手を握り、
「当然だよ。
今日は凄く良い演奏だった。本当におめでとう」
と言ってくれた。
「よし、今日はお祝いだ!僕が奢るよ!」
幸せすぎて雪依は怖かった。
―この幸せがもし壊れたら、自分はどうなるだろう―