優しい檻

船越のレッスンに通う途中で、彼の妻に会った。

「お久しぶりです。」
「呆れた。まだ続いてるの。あなた達」妻は大きな荷物を抱えていた。

「あの、誤解です!
先生とはもうずっと前に別れました。今はレッスンで通っているだけです」
「別に、もう関係ないので、気にすることないわ。どうぞご自由に」

「あの、本当に別れるんですか?
家族を守るんじゃなかったんですか?」

妻は雪依を睨んで
「家族を守るために別れるのよ。」
と言った。

「でも…」
「あなたに私達家族のことに何か言う権利なんかあると思う?」

「思いません。本当に申し訳ないと思っています。ただ…」

「ただ、娘さんにだけはこれからも会わせてあげて下さい。お願いします!
先生、口には出さないけど、本当にご家族のこと愛しています!娘さんに会えなくて、本当に辛いんです」


妻はしばらく雪依を見ていたが、
「そんなこと分かってるわよ」
と言い、雪依に背中を見せ、離れていった。

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