優しい檻
本選の結果は3位だった。
しかし、自分の納得のいく演奏が出来たことが、雪依には一番嬉しかった。
客席の拍手が鳴り響いた時は泣きそうになった。
「お疲れ。雪依」
俊が待っていてくれた。
「ありがとう。俊」
俊一が雪依の家に来たのは久しぶりだった。
「今夜は、お祝いだね。僕が作るよ!」
「俊、座って」
「―何?」
「私に話すこと、あるでしょう?」
「―え?何だよ。急に。真面目な顔で」
「留学のことよ」