優しい檻
しばらく俊一は黙っていた。
「―ああ、そのこと」
「…どうして黙っていたの?相談してくれたって良かったのに」
「別に、相談する必要なんかないよ。断ったんだから」
「――どうして?せっかくのチャンスじゃない」
「雪依と一緒にいたいんだ」
「――俊…」
「別に留学しなくたって、才能があればきっと上手く行くよ。チャンスはどこにだってある。」
「―でも…」
「いいんだ!もう決めたから!」
「私のせいで、そんなチャンス逃すなんて、おかしいわ!留学したって、ずっと離れることなんかないんだし」
「あいつとは会うんだろ?」
俊一は低い声で言った。
「―もしかして先生のこと?」
「僕が離れて、雪依とあいつが会うなんて、許せないんだよ!」
「――俊…」