優しい檻

「答えろよ!雪依!どうしてこんな奴と寝たんだ!」

「…先生の言う通りよ。」
「…え?」

「最近の俊、口ではいいんだって言っていたけど、留学のことで頭が一杯だったでしょ。そんな気持ちで付き合っても迷惑なの。」
「そんなことない!雪依と一緒にいたいから僕は…」
「それが迷惑なのよ。一緒にいたいからなんて、笑っちゃう。人のせいなんかしないでよ。留学する勇気が無いだけなくせに。」
「雪依!違うよ!本当に僕は…」
「やめてよ!迷惑なの!もう冷めたの!
―こんな小心者だとは思わなかった。がっかりよ。先生の方がよっぽど男らしくて素敵よ。」

「――嘘だろ?雪依…」

「体も、彼の方が相性も良いし。」

パン、と音がした。

「―あ…」


俊一は後退り、自分の手を見て部屋を飛び出した。

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