優しい檻


「―大丈夫か…」
船越は雪依の頬を見た。


震えが止まらない。



「よく頑張ったな。」

船越は雪依の体を擦り、抱きしめた。


「―よく頑張ったよ、お前にしたら。でも俺も損な役だな。思いっきり殴られたよ。コンクールのご褒美って、全く何やらすんだ。」


「――ごめんなさい…」

「ま、殴られるのは慣れてるから。」

「――先生、行っちゃった。俊…」

「―ああ、そうだな。」

俊一は人を殴るような人では無いのに。
あんなに彼を傷つけてしまった。


「…終わっちゃったよ…また、一人になっちゃった…」






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