優しい檻
「食えよ。」
船越が食べ物を買ってきて雪依の前に置いた。
野菜スープとサラダだった。
「しばらく食ってないだろ。それ以上痩せてどうするんだ。酷い顔だぞ。」
半ば強引に食べさせられた。
「美味しいです…」
「当たり前だ。」
前にこうやって俊とおにぎりを食べて慰めてくれたことがあった。
俊一との生活が失われた今、どう生きていけば良いかわからない。
「―先生…」
雪依は服を脱ぎ、下着姿になり、船越に抱きついた。
「誘ってんの?」
「…また、前の様にして。先生」
「やめろ。」
船越は雪依を離した。
「―どうして…?」
「また前の様に戻るのか?あいつを忘れる為に!
同じことの繰り返しだ。」
「いいの!繰り返しで!
だって、それでしか生きていけないんだもの!」
雪依は泣き叫んだ。
「―今のお前なんか、抱く価値なんか無い。」
雪依は泣き続け、
「―もう…一人は嫌なの…捨てられたくない…誰かに愛されたいの…」
船越はため息をついた。
「大丈夫だよ。お前は一人じゃない。」
船越は優しく雪依を抱いた。
「お前にはピアノがある。音楽はお前を捨てたりはしない。」
その言葉で雪依は一気に力が抜け、気を失った。