優しい檻

少したくましい体になり、髪も伸びていた。
顔が以前より男らしくなっている。

「びっくりしたよ。
雪依がドイツに留学したって聞いて」

日本語で会話が出来る、それだけで雪依は泣きたい程嬉しかった。

「…いつドイツに来たの?」
「昨日かな。話しを聞いて、飛んで来た。」

―そんな、俊が会いに来てくれるなんて。
夢にも思わなかった。

「そうだ!新聞見たわ!素晴らしい賞をとったのね。おめでとう」
「運が良かったんだ。」

「そんなこと、俊は才能あるもの。…有名になっちゃったのね」

「僕は変わらないよ」
俊一が笑顔を見せた。

―どうして、そんな優しく接してくれるの。
私は酷い仕打ちをあなたにしたのに。

「雪依だって、凄いよ。
1人で留学だなんて。
僕はてっきり…あいつと一緒だと」
< 98 / 106 >

この作品をシェア

pagetop