向日葵-the black cat-
「なぁ、ヨシくん。」
「ん?」
「普通のヤツって、好きな女レイプした犯人目の当たりにしたら、どうする?」
「…レイプ?」
「殺したいと思った俺は、やっぱり異常なのかな。」
耳障りな単語が宙を舞い、それに眉を寄せた彼に俺は、自嘲気味に吐き出してしまう。
夏希の前で人殴ったりとか、そんなことをしたいわけじゃなかったけど、でも、あの瞬間、俺は彼女の手を振り払い、本気で目の前の男を殺してやろうと思ったんだ。
「安心しろ、俺なら殺してる。」
多分、ヨシくんにも普通の人の感覚ってないんだと思うけど、それでもそんな言葉に小さな安堵感が生まれた。
記憶はないけど、でも、多分俺は殺してない。
「じゃあ、こんな時にあの子は独りっきりなんだね。」
「―――ッ!」
ヨシくんはいつも、たとえ俺が単語しか使わなかったとしても、言いたいことやその先までを瞬時に読み取ってしまう。
ポツリと落とされた台詞が沈黙に溶け、俺は唇を噛み締めた。
「つまりはお前は、助けたいとか守りたいとかそんなの口先だけで、どうすることも出来なくなったからすぐに手を離したんだ。」
「…そんな、こと…」
「ない、なんて言い切れないだろ?
結局お前は自己満足で人助けしたつもりになってただけだ。
そういうの、ありがた迷惑って言うんだよ、覚えとけ。」
冷たい瞳が俺に投げられた時、やっぱり俺は何も言えなくなった。
目の前に置かれた缶ビールは水滴を垂らし、テーブルに小さな水たまりを作っている。
相変わらずシトシトと雨音だけが響いていて、それが夏希の涙のようで、堪らなく耳を塞ぎたい衝動に駆られた。
「…けど、本気で好きなんだ…」
「ん?」
「普通のヤツって、好きな女レイプした犯人目の当たりにしたら、どうする?」
「…レイプ?」
「殺したいと思った俺は、やっぱり異常なのかな。」
耳障りな単語が宙を舞い、それに眉を寄せた彼に俺は、自嘲気味に吐き出してしまう。
夏希の前で人殴ったりとか、そんなことをしたいわけじゃなかったけど、でも、あの瞬間、俺は彼女の手を振り払い、本気で目の前の男を殺してやろうと思ったんだ。
「安心しろ、俺なら殺してる。」
多分、ヨシくんにも普通の人の感覚ってないんだと思うけど、それでもそんな言葉に小さな安堵感が生まれた。
記憶はないけど、でも、多分俺は殺してない。
「じゃあ、こんな時にあの子は独りっきりなんだね。」
「―――ッ!」
ヨシくんはいつも、たとえ俺が単語しか使わなかったとしても、言いたいことやその先までを瞬時に読み取ってしまう。
ポツリと落とされた台詞が沈黙に溶け、俺は唇を噛み締めた。
「つまりはお前は、助けたいとか守りたいとかそんなの口先だけで、どうすることも出来なくなったからすぐに手を離したんだ。」
「…そんな、こと…」
「ない、なんて言い切れないだろ?
結局お前は自己満足で人助けしたつもりになってただけだ。
そういうの、ありがた迷惑って言うんだよ、覚えとけ。」
冷たい瞳が俺に投げられた時、やっぱり俺は何も言えなくなった。
目の前に置かれた缶ビールは水滴を垂らし、テーブルに小さな水たまりを作っている。
相変わらずシトシトと雨音だけが響いていて、それが夏希の涙のようで、堪らなく耳を塞ぎたい衝動に駆られた。
「…けど、本気で好きなんだ…」