向日葵-the black cat-
ずっと前から、今の方がもっと。


誕生日プレゼントでも、サプライズでも、由美姉への願いが通じたとかでも、何でも良い。


神ってヤツが居るなら生まれて初めて感謝するし、もう他には何もいらないから、って思った。


夏希の香りがして、鼓動が重なって、溶け合うように求めあえば、どうにもならないくらいに埋められなかった場所が満ちていくのを感じた。


離れていた余白を埋めるように紡ぎ合い、言葉さえも持たないままに口付けを交わす。


指先を絡め合い、舌先で彼女の形をなぞるように体へと這わせれば、壊れてしまいそうだったものの形がまた、形成されていくんだ。


俺と夏希、ふたりでギザギザな部分を重ね合わせ、まるで同じ形にしていくための作業のようにも思えた。


もちろん、世界で一番愛しさを覚えるよ。







「…生きてる?」


何となく、冷静になった頭で考えてみれば、ヤってんじゃねぇよ、俺、とか思っちゃうんだけど。


抱き締めるだけで良いとか思ってたけど、でも実際は、欲深いっつーか、何つーか。


少し古びたソファーの端に座り、片膝を立て状態の俺の反対の膝の上に夏希が頭を預ける格好で、恐る恐る俺は、白灰色を混じらせながら、そう問うてみた。



「殺そうと思ったの?」


「いや、そうじゃねぇけど。」


まるで余韻に浸るような虚ろな瞳で見上げられ、俺は彼女の髪を梳かすように指を通した。


膝の上に猫が乗ってる感じで、それを撫でるのが俺ってのも、何だかおかしな図式なんだけど。


頭でも体でも夏希がリアルだと理解して、“折角会えたんだし、死なれちゃ困る”と言ってみれば、何だかあまり納得していないような瞳。



「このまま眠ったら、また夢になるの?」


「もう飽きたよ、お前の夢も。」


「あたしもだよ。」


何だそれ、って思わず笑ってしまった。


長く離れ、そして見つけ出した答えは、本当にシンプルなものだと思う。


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