向日葵-the black cat-
そう問うた俺に、智也は首を横に振るだけ。


死んだのかなって、何となくそんな風に思って、煙草を咥えてみれば、嫌にそれを苦々しく感じてしまう。



『お前はこんな違法なことするより先に、警察官になるべきだったな。』


『無理っすよ。
警察なんか鳥肌モンだし、どっちみち俺、高校行ってないっすから。』


『俺なんか、中学もロクに行ってないって。』


『そうなんすか?』


『そう。』


話を膨らまされるのが怖くて、無意識のうちにそうやって終わらせてしまう。


中学の頃って言えば、俺は強くなりたくて喧嘩ばっかしてて、それでも親父の前じゃ指の先さえも動かせなくて、

でも、殴られた傷や何かは全部、喧嘩して出来たものだと思われて、誰も俺のことなんてわかってくれなかった。


別にわかってもらえなくても良いとか思ってたけど、それでも吐き出す場所はそんなところにしか見つけられなかったんだ。


だから多分、中学なんて一年分も出席してないと思う。



『お前、何でこんな仕事してんの?
中卒だって、もうちょっとマシなこと探せるだろ?』


『人、探してるんすよ。』


『…人探し?』


『ほら、ヨシくん顔広いし、色んな情報持ってるからって紹介されたんす。
だからあの人の下で働いてれば、もしかしたら見つけられるかも、って。』


『へぇ。
で、そいつ探してどうするつもり?』


『俺にもわかんないっすけど。
でも、アイツ馬鹿だし、何か心配なんすよね。』


へヘッて感じで智也は、少し照れたように頭を掻いた。


コイツは本気で警察官になるべきだと思ったし、正直ここまで他人に入れ込めるなんて、すごいなって思ったんだ。


それと同時に、何故だか少しだけ腹が立った。


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