向日葵-the black cat-
『つか、今どこ?』


『…巡回通りのパーキング前の…』


『マジ?
じゃあ、すぐ戻るから、そこに居て!』


俺の携帯は幸運にも、女の子に拾われたようだ。


けど、そんなのどうだって良くて、早く死んでしまいたかったんだ。







夏希の第一印象は、まぁ、可愛い?


でも、別にその辺歩いてるギャルとあんま変わらない感じだったし、可愛い部類には入るんだろうけど、ヨシくんの飲み屋に行けばそんなの、腐るほど居るし。


取り留めて何かを思うこともなくて、“サンキュウ”って感じできびすを返したその瞬間、背中からは制止の声。



『待て!』


『…まだ何か?』


『アンタねぇ。
普通、拾ってくれた人間に対して、その態度ってないんじゃない?』


噛みつく女だと思った。


つまんないだけの毎日の中に、その瞬間に波紋が広がった気がして、何か笑っちゃって。


必死な感じが面白くて、ポカンとしたり怒ってみたり、百面相なのかと思ったんだ。


そのくせ警戒心が強くて、檻に押し込められたライオンみたいってゆーか。


とにかく、何か格好良かった。


ナンパって言えばそれまでだけど、自分の中に他人に対する興味が生まれて、そんな自分自身が面白かったんだ。


ワクワク感ってゆーのかな、死にたいと思ってたのも、その時にはもう、忘れてたってゆーか。


まぁ、俺の死にたいなんていつも衝動的で、理由がないし、本気で殺してくれるほどヨシくんは優しくないってのも知ってたから。


マジ、あの時のこと思い出す度に、何か笑えるんだよね。


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