向日葵-the black cat-
「…ダメだ…」


「何がダメなんだよ?」


「…俺、アイツの傍に居てやるつもりだったのに…」


吐き出す俺にヨシくんは、“支離滅裂だな”と、肩をすくめるだけ。


落ち着こうとして煙草を取り出して摘み上げてみれば、指の先さえも震えてしまい、力が入らないのだから、嫌になる。



「…アイツのこと救ってやれば、きっと俺自身も救われる、って思ってたのに…」


「そんなの驕りだよ、龍司。」


ヨシくんの言葉が、ただ胸をえぐった。


火のついていない煙草ごと拳を握り締めてみれば、ひどく右腕の古傷が疼くのを感じてしまう。



「…頼むから殺せよ、ヨシくん…」


「お前なんか殺してどうなる。」


「…だって、怖ぇんだよ…」


「背負えもしねぇのに、生半可なことするからだ。」


本当に、その通りだ。


真っ白のソファーに沈みながら、このまま俺ごと覆い尽くして欲しいと、本気でそんなことを思ってしまう。


広すぎる無機質な部屋に、俺の吐き出した震える吐息が溶けて、向かい合う彼は諦めめいた顔で宙を仰いだ。



「…マリファナしかないけど、吸うんなら出すぞ?」


元々ぶっ飛んでんのに、これ以上脳みそ壊してどうすんだよって、そう思った。


確かに楽になれるけど、でも、今の俺の状態じゃ、すぐにシャブに逃げてしまいそうだからと、そう首を横に振れば、“そうか”と、ヨシくんの言葉はこれだけ。



「…良いからさっさと殺してくれよ…!」


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