向日葵-the black cat-
『ビール飲みたいなら、それやるから持って帰ってひとりで飲め。』


『いや、それより腹割って話しません?』


『…あ?』


刹那、智也の手の中のそれがプシュッと小気味良い音を立て、プルタブが開けられた。


仮にも年上の、しかも仕事の先輩の家に来て、ソファーに腰を降ろしてこの態度ってどうなんだろう。


つか、コイツは最近、下手に出てるフリして生意気だし。



『腹筋なら自分ちでやれ。』


『ははっ、面白いこと言いますね。
はぐらかすのは夏希より一枚上、って感じ?』


金色の液体を流し込み、ソファーに腰を降ろした彼は口元を上げた。


多分夏希の話なんだろうけど、腹割って話すほどのことなんてないし、こういう態度がまたムカつく。



『前に話したの、覚えてます?』


『…どの話?』


『親友が虐待されてた、って。
あれ、夏希のことっす。』


『へぇ、それで?』


『何だ、驚かないんすね。
ついでに言えば、俺が探してたのってアイツのことっす。』


『そりゃあまた、ストーカーだな。』


『…やめましょうよ、そんな上辺の会話。』


そう、ただ真っ直ぐに、智也は俺の瞳を捕らえた。


いつからコイツはこんな顔するようになったんだろうって、そう思ったらゾッとしたんだ。


ヨシくんが可愛がってたのは知ってたけど、コイツにはこんな人を射抜くような力があったんだ、ってその時初めて知ったと思う。



『つまり、お前は俺に何が言いたいの?』


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