向日葵-the black cat-
『そんな怖い顔しないでくださいよ。
ただ、俺は龍司さんの気持ちを聞きに来ただけなんだから。』


『…わかんねぇな。』


『アンタの答え次第では、応援するかぶっ飛ばすか決めようと思ってます。』


嫌に自信タップリの顔で、宣戦布告でもされたんだろうか。


コイツが夏希のこと好きだってのはわかったけど、別に俺、戦うほどの気力なんかないし。



『じゃあお前、俺の答え次第ではアイツのこと譲るって?』


『俺はただの親友ですからね。』


『へぇ、余裕だな。』


『余裕っすよ。
アイツは馬鹿だから俺のこと信じてるし、落とすのは簡単なことっす。』


『なら、落とせば良いじゃん。』


『俺の話なんか関係ないですよ。
俺はただ、アイツが幸せになれるなら何でも良いと思ってますから。』


18のガキの言葉だとは、とても思えなかった。


これが本心なのか、それともただの強がりなのかさえもわかんなくて、それ以前に俺にどうして欲しいのかがわからない。



『じゃあ、わかりやすく言いますよ。
アイツに興味本位で近付いてるだけならやめとけ、って忠告っす。』


そう言って煙草を咥えた智也は、白灰色を軽く口の端から吐き出した。


これで下手に出ているつもりなんだろうかと、俺は眉を寄せたように睨むことしか出来ないんだけど。



『ホントはね、アンタのこと紹介してやるつもりだったんすけど。
でも、知り合いだったみたいだし、それ以前にアイツは嫌がってたわけだし?』


『だから、俺の腹を探ろう、って?』


『そっす。
アンタは確かに男の俺でも惚れちゃいそうだけど、女癖も悪いからね。』


『そんなのを好きな女に紹介しようとしたんだ?』


『俺は別に、アイツを救えるならそれが誰であろうと関係ないと思ってますから。
アイツが俺に友達関係を望んでるなら、一生そのままで居てやっても良いと思ってますよ。』


殊勝なヤツだ。


ヨシくんと似てるところがあるけど、でも、ヨシくん以上に強くて頭が切れる。


正直この時、コイツの裏の顔は本気で怖いと思った。


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