向日葵-the black cat-
『もう、俺に聞きたいことはないでしょ?
今度はアンタの答えを聞かせてくださいよ。』


そんな言葉に俺は、諦めたようにため息を混じらせた。


俺の答えを聞くまでは一生ここで踏ん反り返ってそうだし、手持ち無沙汰のままにビールを流し込めば、どいつもこいつも狂ってるなと思わされる。



『好きなのかはわかんねぇけど、それでも俺なら大事にしてやれるよ?』


『…わかんないのに断言?』


『そう。
それに、俺がどう思ってんのかをお前に言う義理なんて、これ以上はないはずだし。』


『それもそうっすね。』


今気付いたと言わんばかりに、実にあっけらかんとして言葉は受け取られた。


押したり引いたり、本気で駆け引きが上手い男ってゆーか、食えないヤツだ。



『それより、お前はアイツが体売ってる理由、知ってんの?』


『知ってるけど、教える義理はないでしょ?
知りたきゃ自分で聞けば良い。』


聞いたって教えてくれなかったんだけど、それを知ってる以上、コイツの方が多分上ってことだろう。



『まぁ、そこまで知ってて入れ込んでるんなら、アンタを信じてあげなくもないっすけど。』


『生意気だな。』


『それは昔から言われてます。
まぁ、それじゃ龍司さんにひとつだけ教えといてあげますよ。』


『あ?』


『アイツ多分、男と一緒に暮してますよ。』


『…何それ、彼氏?』


『違うって本人は言ってたけど、まぁ、昔から男の部屋に転がり込むところあるし。
アイツは大抵、凶暴な男に好かれるから、頑張って健闘してくださいね。』


『俺が健闘しても、お前が横から奪わなきゃ良いけどな。』


『それも面白いですけどね。
まぁ、奪われる程度の愛情なら、所詮終わるってもんっすよ。』


ハッと笑った智也はそのまま立ち上がり、鼻歌なんかを混じらせながら、俺の部屋から出て行った。


コイツのことは本気で嫌いになったし、ぶっちゃけ勝てるなんて思えなかったんだ。


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