向日葵-the black cat-
『美弥子、暇してんだろ?』


『だったら?』


『だったら、相手してもらおうかと思って。』


『何の?』


『セックスの。』


心の真ん中に開いた穴を塞げるのなら、それが何であろうと良かったんだ。


夏希が俺よりあの男を選んだのなら、本当にもう、今度こそ終わりだと思ったから。


美弥子は俺の2つ上で、今じゃヨシくんの下でキャバクラ仕切ってるけど、結構関係は長いと思う。


例えばふらっと居酒屋に立ち寄るように、美弥子とも、そんな風な関係だった。



『今度は誰の代わりにあたしのこと抱きたいの?』


『誰でも良いじゃん。』


『アンタってさ、ホントに最低だよねぇ。』


そう、呆れたような瞳が向けられ、俺は誤魔化すようにおどけてみせた。


お互い一切恋愛感情はないし、キスのひとつもしたことないような、セフレそのものってゆーか。



『まぁ良いけどね、別に。』


刹那、デスクへと腰をついていた彼女を押し倒すと、真っ昼間の陽射しが窓から差し込み、軽く舌打ちを混じらせてしまう。


少なくとも夜ならば、一切の光さえも遮断して、夏希のこと想像出来たのに、って。


乱雑としたキャバクラの事務所で美弥子の体をむさぼれば、アイツはどんな風に鳴くんだろう、なんてことを考えている自分にひどく嫌悪感を抱いてしまう。


喘ぎ声を洩らす口を塞ぎ、散らばった書類が宙を舞う中で、美弥子の体を反転させるようにして、結局バックで最後までヤったわけだけど。


つか、毎度のことながら後味最悪だし、一瞬だけ塞がったようにも感じていた心の穴は、行為が終わると倍の大きさになっている気がするのだから、始末が悪い。


もう何度、欲しいものを諦めてきたんだろう。


< 31 / 113 >

この作品をシェア

pagetop