向日葵-the black cat-
行為の終わり、美弥子の吐き出した白灰色の煙は差し込む陽射しの中を漂い消える。


気だるさの中でひどい虚無感と共に嫌悪感は相変わらずだし、チラッとこちらを伺う彼女の瞳は、まるで俺を蔑んでいるようなのだから。



『お前ってさ、何で俺とヤるの?』


『勘違いしないでよね。
あたしにとって、龍司はただの性欲処理の相手ってだけ。』


『へぇ、冷たいな。
嘘でも好きだから、とか言えねぇの?』


『そんな嘘なんかついてどうすんのよ。
てか、アンタに恋愛感情なんか持てないって。』


『…そうですか。』


『ムカつくのよね、龍司ってさ。
あたしのことなんか見てないし、ヤってあげても嬉しそうな顔ひとつしないし。』


『…すいませんねぇ。』


『まぁ、それが良いと言えば良いのかも。』


楽で良いと言えばそうなんだろうけど、この女はヨシくんに似て、ありえないほどドライってゆーか。


三口ほどしか吸っていない煙草に飽きたように彼女は、それを俺の口へと運んできた。


何にも心が動かなくて、慣れないメンソールの味に吐きそうになる。



『ついでだしさ、このあと買い物付き合ってよ。』


『はいはい。』


軽く髪の毛を直す視線は美弥子の持っていた手鏡越しにぶつかって、俺はため息を落とすようにやる気のない返事を返した。


とりあえず何か買わされるんだろうけど、まぁ、好きにしてくれ、って感じでさ。


この後、街で夏希にバッタリ会ったんだっけ。


< 32 / 113 >

この作品をシェア

pagetop