向日葵-the black cat-
眉を潜めた顔に、咥えていた煙草の煙を吐き出した。


ヨシくんは滑稽だと言わんばかりに口元だけで笑ってて、ため息を混じらせながら俺は、宙を仰ぐ。



「一応言っときますけど。
これから俺が夏希とどうなろうと、アンタには何の関係もないっすからね?」


「へぇ、わざわざ宣言してくれんだ?」


「筋を通しただけですよ。」


“ねぇ、元彼サン?”と、わざとらしく伺い立てる様子に、本気で殴り飛ばしたくなる。


先に手を離したのは俺なんだから、本当は責める理由なんかないはずなのに。


なのに苛立ちばかりが募り、見えない位置で拳を握り締めた。



「まぁ、アイツはもう、アンタのことなんか何とも思ってないみたいっすけどね。」


ハッと笑った智也は、そんな捨て台詞にも似た言葉を残し、立ち上がった。


そのままきびすを返して振り返ることもなく部屋を出ていくのだから、相変わらず殊勝な男だ。


まるで嘘だとは思えないような自信に満ちた顔してて、苛立ち紛れに俺は、ソファーを殴ることしか出来ないまま。



「龍司の可愛いおもちゃは、智也に奪われちゃったみたいだね。」


クスクスとそんな風に笑いながらヨシくんは、先ほどまで彼が座ってた場所へと腰を降ろした。


とどめを刺すような一言に無言のままに睨めば、何が可笑しいのか、向かい合う彼はやっぱり口元に笑みを浮かべている。



「まぁ、これでわかったじゃん。
やっぱりあの子には智也がお似合いで、お前の出る幕なんかどこにもないんだよ。」


心底舌打ちを混じらせるようなそんな言葉に、俺は相変わらず睨むように立ち上がった。


立ち上がって、そしてその辺に投げていたキーケースを手に取ってみれば、驚いたような瞳だけが向けられる。



「どこ行く気?」


だけどもやっぱり何も返さないまま、俺はひとり、ヨシくんの部屋を後にした。


一瞬見えたカレンダーは、あの日からもう、6日が経過していることを告げてくれる。


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