向日葵-the black cat-
「お前はこうやって、一生俺のところで暮らすつもり?」


「…や、うん…」


「龍司は本当に、15の頃から何も変わってないね。
すぐに外の世界を遮断して、内に籠って酒と煙草。」


曖昧に濁そうとする俺を、彼はそんな言葉で一蹴した。


これからどうすれば良いかなんてことも考えられなくて、ただ、一瞬の苦しさや悲しさを楽にすることしか考えていない俺。


自分が一番分かってんだよ、ガキのままだってことくらい。



「お前が何と言おうと、開店準備は進めさせてもらうから。」


「…そん、な…」


「内装工事から始めて、2ヶ月後くらいにはオープン出来る算段だ。
それまでに、少しは立ち直れ。」


ヨシくんの命令口調は、絶対だ。


多分、それがここに居続けても良い条件なんだろうけど。


苦々しいビールの味に眉を寄せ、話し終えて立ち上がった彼から視線を外した。



「酒も煙草も、もちろんハッパも。
そんなのに頼ったって何もしてくれないってわかってるだろ?
少なくとも働けば、気は紛れるんだ。」


「アンタは大事なものほど、そうやって操り人形にしたがるよな。」


「けど、お前だって俺の手の中で転がってる方が良いだろ?」


「そうかもね。
でも、由美姉だけは違ったよね?」


「そうだよ、あの馬鹿。
あの日だって、俺が止めるのも無視で、プリンなんかのために真夜中のコンビニに走ったりするからいけなかったんだ。」


そんな台詞に俺は、小さく口元だけを緩めた。


結局俺たちは、過去の女に縛られて、忘れるために何かに依存してるだけの、弱い存在。


似た者同士だからこそ、上手くやれてるんだろうとは思う。


それでも必ず薄い壁一枚を隔てているからこそ、そんな部分では夏希と違うんだ。


愛して、近付き過ぎたからこそ、壊れてしまった関係。


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