向日葵-the black cat-
父親が死んだ、か。


そういや俺の親父は今、どこでどうしているのだろう。


生きてるのか死んでるのかすらもわからないけど、それでも俺は、アイツのために涙を流したりすることなんてあるのだろうか。



「…夏希…」


心配なんて、余計なお世話なのかな。


お前にはもう、俺なんか必要なくて、智也が傍に居たら簡単に乗り越えたり出来るのかな、なんて。


そんなことを思いながら、悔しさの中でひどく冷たいフローリングへと崩れ落ちた。


未だに想ってるのはもしかしたら俺だけで、そのうち浦島太郎みたく、時が止まった中で過ごしていた自分自身が打ちのめされるようなことになるのかもしれない。


迎えに行ったらお前の隣には別の誰かが居て、なんてことを思えば、またポケットに入れたままの携帯に手を掛けることは出来なくなった。


必要ない、なんて言われるのが怖いんだ。


結局また手が震え出して、乱れる呼吸のままに無意識のうちにハッパを探そうとしている自分が居る。


もう、殺してくれるのならば、それがヨシくんだろうと智也だろうと、俺の中に巣食う真っ黒いヤツだろうと構わない。


何で親父はあの時、俺のことを殺してくれなかったのだろう。



「…夏希…」


会って、そしてただ、抱き締めたかった。


どうしたいとかどうなりたいとかじゃなくて、きっともう、それでしか拭えないのだろうから。


俺が死んだら、お前はどうするかな。


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