向日葵-the black cat-
「電話、掛けもしないならいっそのこと、番号消せば良いのに。」
無意識のうちに手元に置いていた携帯へと落とした視線に気付いたのか、向かい合う彼は困ったようにそう漏らした。
掛かってくることもない電話を待ちながら携帯を握り締めてるなんて、と彼はいつも言う。
「無駄だよ、アイツの番号覚えてるし。」
「…嘘だろ?」
「いや、マジ。」
「自分の番号も覚えてないヤツが?」
だって、ディスプレイを眺め続けてりゃ、嫌でも覚えてしまうだろ。
益々呆れ返ったような瞳に映され、俺はため息混じりに白灰色を吐き出した。
あれから一ヶ月ほどが過ぎたわけだが、いつも記憶の真ん中には夏希が居て、未だに消え去ってはくれないのだから。
「いい加減にしろよ、龍司。
どうせ今頃、あの子は智也とイチャついてるよ。」
「そうかもね。
でも、もしかしたら俺に助けを求めてくるかもしれないじゃん。」
「…ありえないとか、思わない?」
「思うけど。
それでも俺は、きっと助けてやるんだろうしさ。」
自分の馬鹿さ加減は、嫌と言うほど理解しているつもりだ。
俺はただ、会って、そして抱き締めてやる口実が欲しいだけで、もしかしたら未練たらしい自分に理由付けをしているだけなのかもしれないけど。
でも、それでしか希望を見い出せないんだ。
「報われないのに思い続けるなんて、そんなの無意味だよ。」
「ヨシくんが言える台詞じゃないけどね。」
フッと口元を緩める俺に、彼は諦めたように肩をすくめた。
外の世界にはたくさんの人が居て、数えきれないほどの女が居るってのに、どうしてこうも、俺らはひとりの女の影に執着しているのだろう。
記憶を消す薬があるとするならば、ヨシくんはそれを、飲むのだろうか。
無意識のうちに手元に置いていた携帯へと落とした視線に気付いたのか、向かい合う彼は困ったようにそう漏らした。
掛かってくることもない電話を待ちながら携帯を握り締めてるなんて、と彼はいつも言う。
「無駄だよ、アイツの番号覚えてるし。」
「…嘘だろ?」
「いや、マジ。」
「自分の番号も覚えてないヤツが?」
だって、ディスプレイを眺め続けてりゃ、嫌でも覚えてしまうだろ。
益々呆れ返ったような瞳に映され、俺はため息混じりに白灰色を吐き出した。
あれから一ヶ月ほどが過ぎたわけだが、いつも記憶の真ん中には夏希が居て、未だに消え去ってはくれないのだから。
「いい加減にしろよ、龍司。
どうせ今頃、あの子は智也とイチャついてるよ。」
「そうかもね。
でも、もしかしたら俺に助けを求めてくるかもしれないじゃん。」
「…ありえないとか、思わない?」
「思うけど。
それでも俺は、きっと助けてやるんだろうしさ。」
自分の馬鹿さ加減は、嫌と言うほど理解しているつもりだ。
俺はただ、会って、そして抱き締めてやる口実が欲しいだけで、もしかしたら未練たらしい自分に理由付けをしているだけなのかもしれないけど。
でも、それでしか希望を見い出せないんだ。
「報われないのに思い続けるなんて、そんなの無意味だよ。」
「ヨシくんが言える台詞じゃないけどね。」
フッと口元を緩める俺に、彼は諦めたように肩をすくめた。
外の世界にはたくさんの人が居て、数えきれないほどの女が居るってのに、どうしてこうも、俺らはひとりの女の影に執着しているのだろう。
記憶を消す薬があるとするならば、ヨシくんはそれを、飲むのだろうか。