向日葵-the black cat-
もうすっかり季節は夏で、眩しい陽射しに思わず眉を寄せ、取り出したサングラスを装着した。
さんさんと照らす太陽は俺にはひどく不似合いで、通りを歩くのは陽気な格好をしたヤツラばかり。
居るはずのないヤツの影を無意識に探し、また憂鬱な気分にさせられるのだから。
どれだけ探したって、夏希はこの街に居るとも限らないのに。
煙草を咥え、いつも意識するより先に携帯を取り出していて、電話帳を開くのだけど、彼女の名前のところで躊躇うように指が止まる。
「…クソッ…」
そう、自分自身に吐き捨て、咥えていた煙草に火をつけた。
吸い込み吐き出した煙はすぐに肺を覆い、少しばかり落ち着きを取り戻す。
結局、そのまま携帯を操作し直し、智也の名前を表示させて通話ボタンを押した。
幾度かのコール音が耳に響き、それはすぐに通話状態へと切り替わる。
『珍しいっすね、電話してくるなんて。』
「ちょっとさ、お前に頼みがあんだよ。」
『…頼み?』
一体何なんだ、なんて言葉さえも聞こえるような電話口の向こうの不振さをあらわにしたような声色。
サングラスを通して少し暗い色した空を仰ぎ、俺はそれへと煙を吐き出した。
「お前のかーちゃん、居るじゃん?
番号さ、教えてくんない?」
『は?』
「ちょっと、伝えときたいことあるから。」
そんな風に言ってみれば、一瞬の間を置き、“わかりました”なんて声が聞こえる。
珍しく追及して来なかった智也に少しの安堵を混じらせながら手短に電話を切ると、すぐにまたメロディーが流れ、メールと共に携帯番号が送られてきた。
香世ちゃん、だっけ。
11桁の数字を見つめながら、少し騒喧から遠ざかった場所で、俺はその番号に親指を乗せた。
さんさんと照らす太陽は俺にはひどく不似合いで、通りを歩くのは陽気な格好をしたヤツラばかり。
居るはずのないヤツの影を無意識に探し、また憂鬱な気分にさせられるのだから。
どれだけ探したって、夏希はこの街に居るとも限らないのに。
煙草を咥え、いつも意識するより先に携帯を取り出していて、電話帳を開くのだけど、彼女の名前のところで躊躇うように指が止まる。
「…クソッ…」
そう、自分自身に吐き捨て、咥えていた煙草に火をつけた。
吸い込み吐き出した煙はすぐに肺を覆い、少しばかり落ち着きを取り戻す。
結局、そのまま携帯を操作し直し、智也の名前を表示させて通話ボタンを押した。
幾度かのコール音が耳に響き、それはすぐに通話状態へと切り替わる。
『珍しいっすね、電話してくるなんて。』
「ちょっとさ、お前に頼みがあんだよ。」
『…頼み?』
一体何なんだ、なんて言葉さえも聞こえるような電話口の向こうの不振さをあらわにしたような声色。
サングラスを通して少し暗い色した空を仰ぎ、俺はそれへと煙を吐き出した。
「お前のかーちゃん、居るじゃん?
番号さ、教えてくんない?」
『は?』
「ちょっと、伝えときたいことあるから。」
そんな風に言ってみれば、一瞬の間を置き、“わかりました”なんて声が聞こえる。
珍しく追及して来なかった智也に少しの安堵を混じらせながら手短に電話を切ると、すぐにまたメロディーが流れ、メールと共に携帯番号が送られてきた。
香世ちゃん、だっけ。
11桁の数字を見つめながら、少し騒喧から遠ざかった場所で、俺はその番号に親指を乗せた。