向日葵-the black cat-
「俺も、あなたに育てられてたら、智也みたいになってたのかなぁ、って。」


「…智也?」


「何つーか、負けてる感じでマジ嫉妬?」


「あらあら。」


「どうすりゃ良いっすかねぇ、ホント。」


そんな風に言って、俺は宙を仰いだ。


何かもう、とことんまで情けなくなっても良いってゆーか、どっちみち隠せない感じだし。



「それは私の方よ。
一体誰を応援すれば良いのかしらねぇ。」


“息子たちと娘の三角関係”なんて彼女は、おどけたように笑った。


相変わらず賑やかな店内の騒喧さえもどこか遠く感じるこの席で、俺は運ばれてきたウーロン茶を口に含む。



「つか、智也に言わないでくださいよ?」


「龍司さんとデートしたこと?」


「まぁ、それもっすけど。」


「じゃあ、口止め料は?」


「…デザートもどうぞ。」


「あら、ありがとう♪」


多分、喰えない性格なのは遺伝だろう。


食べなさいと促され、俺は諦めたようにフォークを持ち上げ、目前に置かれたパスタをそれへと絡めた。



「まずは、規則正しい生活をしなさい。
陽が昇ったら起きて、ご飯は3食食べるの。
お酒も煙草も、何でも適量じゃなきゃダメよ。」


「…や、はい。」


「あとは、牛乳でも飲みなさい。」


「は?」


「守らなかったら、智也に言うわよ?」


「…いや、ごめんなさい。」


「わかれば良いの。」


なんて、無理やりな。


思えば俺の周りってのは、こんな強引な人間だらけで、少しばかり嫌になるんだけど。


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