向日葵-the black cat-
呆れてはいるが、それでもとりあえずは安堵、と言った顔だろう、彼はため息を混じらせた。


牛乳飲んで、それでどうなるのかなんてわかんなかったし、何かが変わるとも思わなかった。


それでも、さすがに人に言われるまでもなくヤバい顔してんのは自分でもわかってたし、単純に牛乳が体に良いのも知ってたから。



「ヨシくんも飲めば良いのに。」


「…取るな、って言ってたくせに。」


「あぁ、そうだったね。」


「健康志向にでも目覚めた?」


「まぁ、そんな感じかな。」


「安心したよ、龍司。」


「どーも。」


心配してくれてる人が居るのを忘れないで、と香世サンに言われた。


今まで腫れモノに触るような扱いだったヨシくんの顔が少しだけ緩んでいるのを見た時、今更ながらに少しばかり恥ずかしくなったのだ。


それと同時に、くすぐったい感覚にも襲われた。


もしこのまま夏希とダメになったとしても、もう内に籠るのは止めようと思う。


こんなんじゃ誰も喜ばないし、後悔しないように生きるとか、強くなるとか、彼女に言ったこと全部、嘘になっちゃうから。



「何でも良いけど、無理はするなよ?」


「ん、サンキュ。」


「珍しいことを言う。」


「まぁ、たまにはね。」


結局俺は、そのまま酒も飲まずに眠りに落ちた。


相変わらず携帯握り締めて寝るのは癖になってるけど、でも、牛乳飲んだし、なんて意味のわからない言い訳をしてみたり。


明日からは、もう少し人間らしく生きようと、何となく誓った一日だった。


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