向日葵-the black cat-
みんなが由美姉の死を悼んでいて、でも、きっとそれも当然だっただろう。


彼女は太陽に顔を書いたみたいな人で、みんなに優しくて、めちゃくちゃ好かれていたから。


“姐さん”と呼ばれてて、それでも本人はそれが気に入らないと言った様子だったけど、ヨシくんの隣に由美姉が居るのは、当然のことだったんだ。


それからのヨシくんは前にも増して冷酷になった感じで、キャバクラだけじゃなく風俗や金融屋、他にもホストクラブなんかを手広く始め出した。


誰もヨシくんの前で由美姉の名前を口にすることがなくなって、俺の心にも影が出来たのは言うまでもないだろう。


ヨシくんが密かにハッパ吸ってたのも知ってたけど、でも、俺は何も言うことは出来なかったんだ。


あの人の家を出たのと金融屋で働くことを命ぜられたのは、同じくらいの頃だったかな。








サチが俺の家に立ち寄るようになったものその頃で、多分ヨシくんは知らなかったと思う。


それほどまでに仕事に執着していたんだろうし、俺やサチのことまで気が回らなかったのだろうけど、それが幸いだったのかな。


サチとは多分、同じ悲しみを共有していたんだと思う。


彼女は由美姉のことを本当の姉のように慕っていて、由美ちゃんのようになりたいと、そんなことばかり言っていたから。


ヨシくんに言えないことや何かを俺に吐き出して、まぁ男と女だし、気付けばそんな関係になってたんだ。


年上だからとか、そんなの気にする程でもなかったし、真面目に付き合ったのは多分、サチが初めてなんじゃないかと思う。


ハッパも吸わなくなったし、ヨシくんに隠れて会うスリルってゆーのかな、そんなのもあったんだと思うけど、サチのこと好きだったのもホント。


愛したり、愛されたりするのって良いもんなんだって、それを教えてくれたのは彼女だったから、そういう意味では今も感謝してる。


俺の中に住んでた悪魔みたいなのも眠ったままだし、きっとこのまま上手くいくんだと思ってたんだ。


でも、人生そんなに甘くなかった。


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