向日葵-the black cat-
「本当のことを言うとね、龍司と夏希チャンに託したかったんだ。」


「……え?」


「お前らふたりを見てて、少しだけ羨ましくなった。
だから無理やりに計画を進めてたってのに、別れちゃうなんて。」


「…ごめん。」


それがきっと、ヨシくんの本心なのだろう。


今までずっと、俺から夏希を遠ざけるようなことばかり言ってたけど、でも、それは塗り重ねた上辺だったのかもしれない。


託されたものの重みと、そして手放してしまった人のことを思いながら俺は、ただ謝ることしか出来なかったんだ。



「いつか、迎えに行くつもりなんだろ?」


「…うん。」


「だったら、それまではお前ひとりで頑張れよ。」


「…ヨシ、くん…」


「大丈夫だよ、きっと。」


ひどく力強い台詞は、どこか根拠があるようにも聞こえたんだ。



「…いつか、夏希とふたりで、か。」


そう、宙を仰いでみれば、視界の端には口元を緩めたような彼の顔があった。


生きてるなら、必ず会えるんだから。


お前が居たら、きっと楽しくなるだろうな。


思い描いた青写真はひどく鮮明で、愛しささえもを覚えるようなものだった。


無意識のうちにポケットから携帯を取り出し、真っ黒いそれを眺めてみたけど、でも、やっぱりどうすることも出来ないまま。



「…会いてぇよ、アイツに…」


漏らした言葉は、少し悲しげな沈黙に、静かに溶けた。


もう、理由なんて何でも良いから、とにかくお前の顔が見たくて堪んねぇんだよ。


いつかって、いつなんだろうなって、そんなことを思ってしまう。


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