向日葵-the black cat-
本来ならば、今日一日だけは、引きこもるのを許して欲しいと思っていたんだ。


最近めっきり俺に甘くなったヨシくんなら、許してくれるんじゃないかな、なんて期待も少しばかりしていたんだけど。


現実はそうもいかないどころか、あんま良い予感はしていない。



「話とかならさ、ここで十分じゃない?」


「命令だ。」


ほら、何もこんな暑い日にわざわざ、なんて言うより先に、俺の前で久しぶりの仕事の顔ってゆーか、冷たい瞳。


結局は曖昧にしか笑えなくて、そんな俺を一瞥した彼は、きびすを返してさっさと部屋を出てしまう。


パタンと扉が閉められ、冷房から流れ出る人工的な冷たい風だけが俺の肌を撫でた。



「んだよ、意味わかんねぇし。」


そう、呟いてみたけれど、虚しさは増す一方だった。


だって夢とも現実とも区別がつかない中で、先ほど、由美姉に馬鹿みたいなこと願ってしまったのだから。


おまけにヨシくんの顔は怖いし、誕生日プレゼントくれとか言わないから、今日だけは、そっとしておいて欲しかったのに、って。


まったく、世の中はなんて世知辛いのだろう。







フローリングに直に腰を降ろしていたからだろうか、結局、気だるさは拭えないままだった。


それでも準備して、何とか家を出たのはきっと、あの命令口調に馴染み過ぎている自分が居る証拠なのだろう。



「暑いって、普通に。」


そう、思わず漏らしてしまったのは仕方がなかったろう。


一応毎日外に出るようにはしてたけど、それでも最近は陽が落ちてからの方が多かったわけで、こんな真っ昼間の直射日光は、やはり俺とは相容れない気がする。


憂鬱な体を押して車へと乗り込み、俺は何度か行ったことのあるショットバーへとそれを走らせた。


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