夏 夢現
気がついたら全速力で走っていた
どこに行ってんだか知らねぇけど・・・
「はあっ」
息を吐いて止まったところは海だった
青くて青くて
俺には痛かった
「なんで・・・俺ここにいんだろ・・・っ」

右の腕が熱くなった
来たくなかった
来れなかった
大好きだったこの場所に
あんなに好きだった海も今は匂いをかぐことすら
苦しくて、どうにかなりそうになる

「熱・・・」
今でも思い出せる
俺の腕をつかんでいたんだ
俺も必死につかんでいた 離さないようにって
でも俺は離してしまったんだ
海に引きずりこまれる瞬間を、俺は目の前で見た
大切な人が自分の手からすりぬける瞬間を、俺はあじわった
この右腕にまだ感触が残っている



< 6 / 12 >

この作品をシェア

pagetop