有罪モラトリアム
第1章:急襲

高校生の葛藤

今から5年前の話に遡ります。
県内普通レベルの県立高校に通う私は、その時大きな悩みを抱えていました。

いつも一緒にお昼を食べていた仲良しの5人の女友達がいました。
みんな誰一人彼氏はいなくって、「彼氏ほしいね~。」が口癖のようでした。
その中でも特に仲の良かったSちゃん。
Sちゃんには同じクラスに好きな男の子、T君がいました。
Sちゃんはいつも遠くからそっとみつめているだけで、ひっそりと片思いをしていました。

そんな彼女がある日、突然思い立ったように
「私、サッカー部のマネージャーに立候補してみようかな。一緒にしてくれない?」と言い出したのです。
もちろん目的はT君。T君はサッカー部員でした。

私はそのとき、どの部活にも入っていませんでした。
でもサッカーを観るのは好きで、ルールも知っていたし、
サッカー部のマネージャーっていうのも悪くないと思い、一緒にマネージャーをすることにしたのです。

マネージャーの仕事は思ったより大変でした。
でも、いつもはグループのみんなでプリクラ撮ったり、カラオケしていた放課後の時間を、有意義に使ってることで、充実感を感じていました。
それになんといったって、今まであまり男子と話す機会なんてなかった引っ込み思案な私だったのに、普通に会話できるようになりました。
初めて、異性の友達というものができました。
初めて、男の子にメルアドや電話番号を教えちゃいました。
練習試合にクッキーや蜂蜜レモン、ジュースなんかの差し入れをするとみんな喜んでくれました。
毎日が、とても楽しかったです。

そんなある日の事、とんでもないことが起きました。
部活終了後、片付けを終えてSちゃんと一緒に校門を出て、分かれ道で「また明日~!」ってお別れした直後のことでした。

しばらく1人でポツポツと歩いていると、
後ろからチャリでT君がやってきて
「よかったら一緒に帰らない?」

へっ?!!!

これは一体どういうことなのかと、頭の中をぐるぐるさせていたら、
彼は予想もしていなかったことを私に言ったのです。
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