有罪モラトリアム

私の本音

誰かが幸せになれば、その一方で誰かが不幸になる。
恋愛では特にそのルールが著明だ。
それを目の当たりにしてしまった。

いや、私は同じ事を別の視点で見ているではないか。
自分の立場が違うだけでこんなに冷静に事をみつめることができる。
こういうことだったのだ。
物事は複雑なようで、実はすごくシンプルなことだったのだ。

私はいつも自分にとって都合の悪い事から逃げてばかりいた。
嫌な事は、目を瞑ってじっとこらえていればいつか勝手に通りすぎていくものだと思っていた。
そう思いたかった。

嫌な事なんて忘れてしまえばいい。
楽しいことや、嬉しいことばかり考えていれば幸せなのだ。

学校生活から目を逸らせて、
楽しいゲームの世界へ、大好きなカナタさんの傍で、
ずっと楽しく過ごせたらそれでいいのだ。


・・・本当に?



否。
違うのだ。
本当はずっとわかっていた。知らないフリを続けていただけなのだ。

本当はこのままでいいわけがない。
ずっと仮想世界で生きていくつもり?
自分は不幸だって思い込んで、それは誰かのせいだって責任を押し付けて。

本当はそんな自分は大嫌いだった。
子供っぽい自分を毛嫌いしているのは、こういう理由があったのだ。
だからいつまでたっても自分に自信が持てなかったのだ。

私が見えないフリをしていたのは、学校の人間関係だけじゃない。
自分の進路からも逃げていた。
高校2年の冬、3年生になる前に自分の進路をある程度決めなくてはいけなかった。
それで3年生のクラス替えが行われるのだ。
私はまだ漠然としたことしか考えていなかった。
来年受験生だということを考えると、憂鬱で仕方が無かった。

私はいつも人から幸せをもらってばかり。
カナタさんのことを好きだとずっと思っていたくせに。
臆病者の私は、彼に一歩を踏み出すことすらできなかったくせに。
彼は私に勇気を出して気持ちを伝えてくれた。
そして私に教えてくれた。
恋をすることがとびきり素敵な気持ちを与えてくれることを。

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