有罪モラトリアム

彼は学校の話をすると必ずこう言った。
「ユキさんはどうしたいんですか?」
私は誤魔化しながら答える。
「僕は、いつもユキさんの味方ですよ。」
彼の優しさに甘えて、甘えて、
結局自分がどうしたいかだなんて、有耶無耶にしていた。
彼はヒントをくれていたのに。
ここでもやっぱり、気づかないフリを続けていたのだ。

T君だって同じじゃないか。
自分の気持ちを隠して、好きだと堂々と言うことすらできなかった。
気持ちを伝えてくれたからこそ、やっと彼の事を好きだという自分に気づいたくらいだ。
自分の気持ちをずっと押さえつけていた。
面倒な事を避けたかったから。
私が学校に通い続けることができたのは、T君のおかげだ。
彼が私にとって都合のいい場所を作ってくれていたから。
ずっと守られていた。庇われていた。
でも私はT君に何もしてあげれてないじゃない。

私よりずっと深い傷を負っているBだって、
勇気を出して、傷つくことを恐れながらも新しい恋に向かって行った。
すごくカッコイイと思った。
背中を押してあげたいって思った。

私はみているだけ。
流されているだけ。
そして与えられた幸せで、自分を幸せだと思い込む。

滑稽だ。実に馬鹿馬鹿しい。
なんてバカなんだろう。

はやく大人になりたいな。

なんて思う一方で

ずっと子供のままでいたいな。

なんて甘えも存在していた。

私はどっちつかずでふらふらと漂い

自分の居場所を見失いかけていた・・・。

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