有罪モラトリアム

立ち向かえ、自分


1月の初旬。

まだ冬休みのことでした。

その日は珍しく雪が降っていて、私は厚手のコートに腕を通し、

マフラーを首にかけて、指輪を着け、手袋をはめて・・・

Sの家へと向かいました。



1対複数じゃ、どう考えても分が悪いと思い、
どうせならSと1対1で腹を割って話したいと思いました。

団体というものがどれだけ人を残酷にするか、
私はずっと目の当たりにしてきました。
1人じゃできないことも、みんなと一緒だったらできる。

赤信号。みんなで渡れば怖くない。
みんなで渡ればむしろ楽しい。

チャイムを鳴らしても、家にはあげてもらえないかもしれない。
出てこようとすらしないかもしれない。
でも外で何回も待ち伏せしていれば、絶対会えるはず。
今日会えなくても、絶対諦めないんだから。



彼女の考えを聞きたかった。
なぜ私だけではなくて、Aまで標的にする必要があったのか。
なぜこんなにも長い間、嫌がらせを続けるのか。
何がそんなに許せないのか。
私はいろいろと自分で想像はしてみたけれど、本人の口から本当のことを聞きたかった。

もう仲が良かった頃の関係に戻れるとは思えなかった。
そんなのはきっと綺麗事だ。

私の目的はただ一つ。
SがAに謝罪をし、嫌がらせをやめること。

もうこれ以上、Aのことを不幸にしたくなかった。
これから高校生にとって大事な時期になるのだ。
今、学校に通えなくては・・・このままではAの人生を台無しにしてしまうんじゃないかって、すごく怖かった。

私の事は彼女のことが片付いてから考えればいい。


私はなけなしの勇気を振り絞って、チャイムを鳴らした。




ピンポーン
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