有罪モラトリアム

数時間は経っていたと思います。
なんだか無性に寂しくなってきてしまいました。
自分から「待っています」と言った手前、じっと待っていることしかできなくって・・・。
こんな近くにいるのに、彼に話しかけることも、みんなの輪の中に入っていくこともできません。
邪魔なんかしたくない。
でも彼と話したい。
いつ練習終わるのかな…。いつまで待っていればいいのかな。


イヴが終わってからずっと会いたくてたまらなかった。
がんばって我慢して、我慢して、やっと会えたというのに、
会えただけじゃ私は満足できないのかな…。
なんでこんなに寂しくなっちゃうの…?

ふっと気づくと、やばい・・・涙が出そう。
トイレへ行くふりを装って、部室の外に出ました。

彼を心配させたくなんてありません。
構ってもらえなくて泣いてしまっただなんて、みっともなさすぎます。
目をごしごしこすりながらトボトボと歩き始めました。

ちょっと散歩でもして気を紛らわせてこよう・・・。

私が通路を通って広場の方へ向かおうとすると


「ユキちゃん・・・だよね?」


と、突然後ろから見知らぬ声が聞こえました。
思わずビクッとして、後ろを振り返ります。
知らない男の人でした。確か部室にいた人かも。


「どうしたの?トイレなら反対だよ?」


うっ・・・。
迷子かと思われたのかな・・・。
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