有罪モラトリアム


「私が、私が好きなのは、あなただけです。」


すきです。
だいすきです。
気持ちがあふれて、もうどうしようもありません。
もっと抱きしめてください。
もっと私の近くに来てください。
私の気持ちを受け止めて。


私はまっすぐに彼を見つめました。


だんだん彼の顔が近づいてきます。


そっと目を瞑ります。


やっぱり体は震えてしまったけど、怖い気持ちも少しあったけど、


それは彼の事をすごくすごく好きだから。


幸せでした。


私はずっと噴水が奏でる水の音を聞いていました。


唇が重なって、頭が沸騰しそうになりました。


柔らかい感触。コーヒーの匂い。


彼という存在をすぐ近くに感じて、


それが嬉しくて、恥ずかしくて、


しあわせで、


彼が離れてしまうと、目を開けてまたじっと見つめ合いました。


離れたくないよ。


何度も何度も、そうやってキスを繰り返して。


お互いの気持ちを確認し合うように。


あふれてしまうほどの気持ちを、彼に伝えるために。


だきしめて、唇を重ねて、


「だいすきです。」


「すき・・・。」


なんで幸せなのに、嬉しいのに、涙が出るの?


気がついたら泣いていました。


「すき」という言葉以外しゃべることもできなくて。


自分が泣いている意味すらわからないけども。


私が泣きやむまで、ずっと彼は優しく抱きしめてくれました。
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