有罪モラトリアム

Aと待ち合わせの場所で落ち合い、
久々の通学路を一緒に歩きました。

A「久々だから緊張しちゃうな・・・。みんな私を見てどう思うんだろう。」

Aはとても不安そうに見えました。
精一杯励ましながら、一緒に学校へ向かいました。

Aは学校の校門が見えるところまで来ると、一瞬足を止めました。

A「教室に行くのが、怖い。」

Aの気持ちは痛いほどよくわかりました。
まだいじめがなくなったという確証はありません。

私「大丈夫。一緒に行こう。」

私達は手を繋いで校門をくぐり、下駄箱で靴を履きかえ、
一緒に教室まで歩きました。

その途中でクラスメイトに何人か会いました。

すると1人が私達にこう言ったのです。

「おはよ。」

今まで、Sと喧嘩をしてから、私はクラスの人に挨拶をされたことがありません。
部活の人は会うと挨拶をしてくれましたが、それ以外の人から挨拶をされたのは本当に久々のことでした。
私はその時「もしかして。」と何か変化に気づいたのです。

私は緊張しながらも、その子に「おはよ~。」と返し、
Aも同じように挨拶を返しました。

2人で顔を見合わせました。
Aも何かに気づいた様子です。

私「教室に行ってみよう。」

私はAの手を引いて、教室へと足を速めました。

教室の扉は既に開いていて、そのまま中に入ります。

そして私達の目に入ったのは、泣いているSの姿でした。

Sの周りには、グループのみんながいました。

Sを筆頭にして、私達に酷い仕打ちをしていたメンバーです。
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