有罪モラトリアム
わけがわからなくて、Aと顔を見合わせながら紙袋をあけて見ると、

中には体操服、ノート、教科書、シューズ、文房具数点などなど。

2人分、入っていました。

これは・・・Sなりのお詫びなのかも。

紙袋いっぱいに、Sの「ごめんなさい。」という気持ちが詰められている気がして・・・

私は思わず窓の方に駆け寄って、Sの姿を探しました。

でも彼女の姿は見えません。もう帰っちゃったのかな。

しばらく窓の下(丁度下駄箱があるところ)を見ていたら、Sが出てくるのが見えました。

私は窓から大きな声で叫びました。


私「S~~~~!ありがとーーーー!!」


Sは私の方を振り返り、そして顔を見ると、
一目散に逆方向へ走っていってしまいました。

たくさんの人が私の方を見ていました。
思わず叫んでしまって・・・恥ずかしかったです。

でもなんだかすごく嬉しかった。
嬉しくてたまらなかった。


Aと2人で重たい紙袋を持って、一緒に帰りました。

その途中に、なんとSが待ち伏せしていました。

S「ユキ、ばっかじゃないの?
 あんな大声で叫んで恥ずかしくないの?
 あんたって本当にばかだね。
 別に許してもらおうだなんて思ってないから。」 
   
私「物をもらったらお礼を言うのは当たり前でしょ?」

S「・・・。もうありがとうだなんて言わなくていいから!」

彼女はそれだけ言い残して、また走っていってしまいました。

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