有罪モラトリアム

彼は無言のまま私の手を引っ張って、歩き続けている。
どうしよう、怒ってるんだよね?
Yさんと喋っちゃいけないって言われてたのに。
Yさんの気持ちが気になって、聞かずにはいられなかった。
なんで彼が嫌われなくちゃいけないんだろうって、そう思ってたから。


私「あの…カナタさん、私お金払ってないです・・・。」

彼「売り上げ使うので、そんなにかかりません。僕が払っておきます。」

私「後で返します・・・。」

彼「別にいりません。」

怒った口調で言われて、つき離された気がして、思わず足を止めた。
手がガクンと引っ張られて、彼も足を止めた。

私「怒ってますよね。話すなって言われてたのに話してたから。」

彼「別にユキさんに怒ってるわけじゃ・・・。」

私「だってカナタさん怖いもん。」

彼「・・・すみません。」


ハァ、とため息をついて彼は手を離した。
頭をクシャクシャと掻いて、俯いてしまった。


私「YさんってFさんのことが好きなんですね。」

彼の表情がサッと変わった。
驚いている。
きっとFさんのこと、私が知らないって思ってたんだ。

私「Fさんのことをみんなの前でフッたから許せないって、Yさん言ってました。」

彼「Fさんのこと、知ってたんですか・・・。」

私「何があったんですか?知りたいです。教えてください。」

彼「・・・ここは寒いので、どこか中に入りましょう。」


近くにあった、カラオケ店に入った。
受付で「1時間お願いします。」と彼はいい、マイクを受け取って指定された部屋へ向かった。

部屋のソファーに隣並びに座ると、彼は話し始めた。
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