有罪モラトリアム

カラオケ店を出て、一緒に電車に乗りました。
彼は、落ち込んだ様子で何も話してくれませんでした。
きっと私に悪い事したって思ってるんだ。
YさんやFさんに対しても思ってるかもしれない。
でも彼は何も悪くない。
なんか、カナタさん、可哀想・・・。
責任感の強い人だから、きっと自分の事いっぱい責めてる。

私は何を言ってあげればいいんだろう?
どうしたら彼は元気になるんだろう??

目的駅に着いて、2人で駅から家まで歩きました。

その途中に、あの時の公園がありました。

私はさっきの彼の言葉を思い出しました。

「ユキさん、後で消毒して・・・w」



私「カナタさん・・・消毒、しなくていいんですか?」


彼「え?」


私「くちびる・・・。」


彼「え??あ。あれは・・・冗談で言っただけですよ。」


私「そんなのわかってます。」


彼「今は・・・やめておきます。
 ユキさんに嫌な思いさせてしまったのに、そんなことできません。」






私「じゃあ私がするから、いいです。」


私は精一杯背伸びをして、彼にキスしました。
ごちっと、やや顎にあたり気味でしたが・・・。
自分を責めないで。
でも恥ずかしくなって、彼の顔を見ることができませんでした。


彼「ユキさん・・・。」


私は俯きながら言いました。
真っ赤な顔をみられたくなかったから。


私「カナタさんは何も悪くないです。」

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