有罪モラトリアム
ユキさんへ。



突然のお手紙、びっくりされていると思います。

私はFと言います。

もうカナタさんからお話を聞いていると聞き、

どうしても伝えたいことがあり、お手紙を書いています。

私は以前彼のことを好きでした。

お話を聞いているなら知っているとは思いますが、

私の情けない告白の末、フラれてしまいました。

今でも時々あの時のことを後悔しています。

理由は、ただ恥ずかしくてみっともなかっただけじゃなくて、

Yのことも理由の1つです。


私にとってのYは、カナタさんにとっての私、だと思います。

だから今はカナタさんの気持ちがよくわかります。

だからこそ、Yにはカナタさんのこと恨んで欲しくなかった。

ユキさんにまで手を出そうとしているなんて、2人の話を聞くまで全く気づいていませんでした。

私とカナタさんとYで、昨日やっと本当の和解ができました。

でもユキさんにもちゃんと謝りたくて、こうしてお手紙にしています。


こないだ初めてユキさんを見たとき、あぁ、カナタさんの好きな人ってこの人なんだって確信しました。

カナタさんがユキさんを見つめる表情がすごく柔らかくて、今まで見たことない彼の姿だったから。

正直に言うと、その時まだふっきれていませんでした。

でもその姿を見たら、諦めようって思うことができました。

だから余計にお礼が言いたくなりました。


私とYに気兼ねすることなく、また部室にも遊びに来てください。

私はYと向き合ってみようと思います。今までずっと逃げていたので。

Yも謝りたそうでした。どうか彼のこと許してやってください。

本当にごめんなさい。

そして、ありがとう。



Fより。
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