有罪モラトリアム
彼は車の外に出て待っててくれました。
「カナタさん…。」
「寒いから、乗ってください。」
助手席に乗り込んで、
2人で見つめ合っていました。
「どうしても話したかったんです。」
「私も…。」
「少し場所を移動しますね。」
彼はそう言うと、車を近くの公園の駐車場にとめました。
「ワンピース、着てくれたんですね。寒いのに。」
「コート着てるから大丈夫ですよ。中にストールもかけてあるんです。」
ほら、と少しコートを広げてみせました。
彼は私のコートの中に手を伸ばしました。
そして、ぎゅうっと抱きしめてくれました。
「逢いたかった・・・。」
嬉しくて、嬉しくて、
ものすごくドキドキしながら、
自分でも信じられないようなことをしていました。
彼から見えないように
こっそり、肩からコートをはずしました。
彼が私を抱きしめているのもあって、
コートは私の腕からスルリと落ちました。