有罪モラトリアム

カナタは何も言ってくれません。

不安で、不安で・・・

また涙が出そうになりました。




「ごめんなさい・・・。」



「ユキは隙がありすぎる。」



「トイレの前で待ち伏せされてて…。」



「外に行くならケータイくらい持ってけばいいのに。」



「キスされて、怖くなって…走って逃げちゃったから…。」



涙が堪え切れなくて、とうとう泣いてしまいました。
怒るの、当たり前だよね。




「…すみません。これじゃ八つ当たりです…。」



そう言って、ぎゅうっと私を抱きしめました。



「油断してました。ユキから目離すんじゃなかった。」



「ごめなさ・・。」



「あぁ、もう腹立つな、あの男。殴っとけばよかった。」




私は彼の腕の中でしばらく泣いていました。
カナタ以外の人にキスされたことなんてないのに。
私が落ち着くのを待って、彼は言いました。




「あとで消毒しますから。覚悟しといてください。」



「え・・。」



「戻りましょうか。心配するといけないので。」
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