有罪モラトリアム


彼はキスして言いました。


「抱いていいですか…?」


初めての時って、ものすごく痛いとか、
血が出ちゃうとか、
もちろん、知っていました。

でも求めてくれることが嬉しくて、
体は火照り切っていて、
好きだから断る理由もありません。

あとは、怖いと思っている気持ちをなんとかするだけ。

彼のために我慢できるか、どうか…。



「あの…初めてなんです。」


「わかってます。」


「だから…初めての人はカナタがいいなって。」


「本当に僕でいいんですか?」


「はい…。」


「かわいい…。」






その後のことは、本当に記憶が曖昧です。


途中ものすごい激痛があって、


そこから意識を少し失いました。


頭の中が真っ白になって、よく覚えていません。


時々名前を呼んでくれたり、


「愛してる」と言ってくれたり、


途切れ途切れに覚えています。



< 285 / 287 >

この作品をシェア

pagetop