有罪モラトリアム
電車はあっという間に東京駅へ到着しました。

ま、まだ心の準備が・・・!

人の波にもまれて改札に押し出されます。

彼には、電車の到着時間を教えてあるのですが・・・もう彼は待っているのでしょうか。

ドキドキドキドキ・・・・・・・
もう、期待と不安と緊張で胸がドキドキしっぱなしです。


改札を出て、人の波が過ぎると、

そこに1人の背の高い男の人が立っているのに気づきました。

その人はじぃっと私のことをみつめていました。


あ。彼だ。

すぐにわかりました。

私を見つめる優しそうな目。深い目の色。

真面目そうな整った顔立ち。

イメージ通りの彼がそこにはいました。

東京駅の喧騒は耳から遠ざかり、私の目には彼しか映っていませんでした。

どれくらいそうしていたのかわかりません。

今考えれば、一瞬のことだったのかもしれません。

「あの・・・ユキさん、ですか・・・?」

優しい、低い声。

「はい・・・。」

「はじめまして。カナタです。」

そういって、少し目元を緩めて笑った。
うわ・・・カッコイイ・・・。

「はじめまして。ユキです。」

私も精一杯の笑顔を返しました。

「じゃあ、みんなのところへ行きましょうか。」

「はい。お願いします。」

私は彼の隣を、少し遅れてついていきました。
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