有罪モラトリアム

駅に向かう道の途中に、ゲームセンターがあった。

私「ちょっと寄って行きませんか?プリクラ撮りたいです。」

彼「いいですよ。」

私「いろいろ奢ってもらっちゃったから、このくらいは払わせて下さい。」


2人でプリクラを撮りたい気持ちももちろんあったけど、
本当はただの時間稼ぎだった。
少しでも一緒にいたい・・・。

撮影するとき、ドキドキしながら体をピトリと寄せた。
ペンギンのぬいぐるみを2人で抱っこした。
ちゃ、ちゃんと笑えるかな。

プリクラを撮って、また帰路に着いた。
彼はまた手を繋いでくれた。


私「駅までで大丈夫です。」

彼「途中まで一緒に行きましょうか?」

私「遠回りになっちゃうでしょ?」

彼「もうちょっと一緒にいたいんです。」


そういわれると、何も言えなかった。
私も同じ事を思っていたから。

ガタンゴトンと電車に揺られている間、
ずっと彼の手の暖かさを感じていました。

ずっと繋いでいたいな・・・。

でもそんなことは無理だってわかってるけど。

電車はやっぱり、あっという間に目的駅に到着してしまいました。


彼「また一緒にどこか行きましょう。」

私「はい。」

彼「それじゃあ・・・。」

またホームでお別れです。

彼の手が離れてしまいました。

私「指輪・・・ありがとう・・・。」

彼「家に着いたら電話ください。」

彼はニッコリ笑って手を振ってくれました。

電車は非情にも、あっという間に笑顔の彼をかき消します。

今度は泣いてしまいました。



1人電車の中で、彼にもらった指輪をじっとみつめます。

心寂しくなって、ペンギンをぎゅーっと抱きしめました。

何度も何度も、彼にもらった言葉を思い返していました。
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