【完】ペテン師との甘い夜



「おはよう伊織。」



「おはよう久美。」



私は会社の同僚であり高校からの同級生の久美に挨拶。



久美とは上辺だけの付き合い。お互いの深い感情なんか興味もないの。



だからお互い気を遣わなくていい。



私の過去を知っている久美は、会社と夜で『顔』を使い分けてることも知っている。



「今日の雨、なんか嫌ね。伊織。」



「あの日もこんな雨だった。」



私が溜息まじりに言うと、久美も苦笑いを返した。



「さあ、仕事しようかな。」



私は伊達眼鏡をくいっと上げてデスクへ向かった。
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