【完】ペテン師との甘い夜
五年前。
廃墟ビルの下でバキバキと殴り合う音。
その一部始終を見ていたオレは、残る人影に歩み寄った。
「誰だ。まだ残っていたのか。」
そう言って顔をオレに向けた勇治の瞳は、もう、生気を失った虚ろな瞳だった。
勇治とは向こうの大学で出会ってからだから、オレが14歳、彼が10歳の時だっただろうか。
あの頃の勇治の生き生きとした姿は微塵もなく、まさにもぬけの殻だった。
「もしかして、あんた、セキなのか…?」
「うん。何年振りだっけ?」
オレは痣だらけの勇治に更に歩み寄った。