【完】ペテン師との甘い夜
セキが歌を再開させる。



私は耳を傾けながら頭では葛藤していた。



ホントに、セキを殺さなきゃならないの?



何故?



それが、彼の描いたシナリオだから?



私が彼を、彼が私を愛してしまったから?



自然と体が震えるのが分かった。



私の手をセキがやんわりと包む。



「伊織、君が恐れる必要なんてないんだよ…。」



穏やかで、耳に、心にしんと染み渡る声。



私にもよく分からない涙が、頬を伝った。
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