【完】ペテン師との甘い夜
運転を続けていた車が静かに止まる。



そこは、既に使われてないような高台にそびえ立つ教会。



「行くよ、伊織。」



触れていた青白い手が私の頭を撫でた。



私は、唾を飲み込み車をそっと降りた。



荒れている足場をふらふらしながら歩く。



セキが私の右手を優しく引いた。



私達は教会の奥の草の広がる場所へ足を運ぶ。



一番奥には胸の辺りまである錆びた柵がある。



そこからは、ネオンやビルの光、車の行き交う様子が見えた。



「下は、せわしなく時間が過ぎてるのね…。」



私達の間には穏やかに時間が経ってるように感じるのに。
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