【完】ペテン師との甘い夜
手が、麻痺した感覚。



それでも私はやらなきゃいけないのだ。



セキを、愛しているからこそ…。



セキは私の頭を引き寄せて耳元で囁いた。



「愛してる。オレを、忘れないでね…?」



その言葉の語尾は震えている。



セキが、泣いてるんだ。



「忘れないよ…。私、ずっと愛してるから。」



「ありがとう…。」



顔を見つめれば優しく瞼を閉じたセキの顔。



私は息を吸い込み。



ドス………っ!



ナイフを突き立てた。



鈍く生々しい感触が、私の手に伝わる。



「…っ!」



セキの脇腹には、私が突き立てた刃。
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